羽毛ふとんの基本

そもそも羽毛ふとんとは?
 ダウンを50%以上使った布団を「羽毛ふとん」、50%以下のものを「羽根ふとん」と呼び、
区別しています。

 例えば、ダウン90%のふとんには、充填量(羽毛の重量)の90%入っていて、残りの10%は
スモールフェザーが入っています。スモールフェザーには、硬い羽軸が付いていますので、
フェザーの充填量が多いほど、ガサつき感があります。
 そのためダウン充填率が高いほど、高級で良いお布団とされています。


ダウンとフェザー

▶ 『 羽毛 』 ダウン ⇒ タンポポのような綿毛で、芯が無くふわふわしています。
▶ 『 羽根 』 フェザー ⇒ 中心に硬い羽軸があり、湾曲しています。

ダックとグ-スの違い
ダウンの種類
グースとダック?
 羽毛は食用に飼育されたものの副産物であるため、フォアグラを目的に十分に生育させ飼育されるグースに比べ、食肉を目的とするダックは、ダウンが十分に育つ前に食用となります。

 そのため一般的には、ダックよりもグースの方が、品質的には良いと言われます。

 また、グースの方が優れている点として、以下のような事があげられます。

【保温性に優れている】
 グースは、ダックに比べて体が2~3倍も大きいため、成熟したグースからは空気包含力に富む大きなダウンボールが採れ、ダウンボール1個あたりの毛の本数も多く、保温性に優れています。

【軽い】
 グースの羽根は、ダックに比べて羽枝は細く柔らかいので軽いです。

【羽毛の匂いがあまりない】
 グースは草食性なので、雑食性のダックに比べ羽毛の匂いがあまりありません。



マザーグース・マザーダック
マザーグース  グースやダックには、食用の採取を目的に飼育されているものと、マザーグース・マザーダックと呼ばれる卵を採る目的で4~5年間飼育されている親鳥がいます。

 この羽毛は、長い期間飼育され、成長期間とともに羽毛(ダウン)の成熟度にも違いが生じます。通常の羽毛に比べ大きくコシがあるので、保温性やかさ高性に富み、また耐久性にも優れています。

 また、普通のダックやグースに比べ数も少なく、希少価値から高級になります。



アイダーダック
 アイダーダウンとは、野生のアイダーダックの雌が卵をかえすために、自分の胸から抜き取って巣に敷き詰めた羽毛のことです。

 毛綿鴨(ケワタガモ)と呼ばれる海洋性水鳥のアイダーダックは、アイスランドやグリーンランドなどの北極圏の海岸線に生息し、厳しい寒さに耐えるため、全身を覆う羽毛には弾力があり、より保温性に優れています。

 アイダーダックの巣は、5月中旬~6月にかけて、海岸の低地や岩場などに作られます。
保護鳥であるアイダーダックからは、直接羽毛をとることが出来ないため、卵からかえった雛鳥が巣立ったあと、巣を壊さないように羽毛が採取されます。

 1羽の水鳥から直接採取される羽毛の量が約60gなのに対し、巣から採取されるアイダーダウンの量は約20gほどです。採取が困難であるため、大変稀少で、そのためアイダーダックは「キングオブダウン」と称され高級と評価されるゆえんです。




ダウンの産地
 同じ羽毛でも、「暖かい地方に生息する水鳥」と「寒い地方の水鳥」の羽毛では、その品質に違いがあり、経度の高い寒冷地や寒暖の差が激しい地域で採取されたダウンほど、良質とされています。
 それは寒い外気から自らの体温を保つために、寒冷地で育った水鳥ほど寒さから身を守る機能が発達し、保温力の優れた良質の原毛を産出するからです。
 そのため、北緯45度~53度付近の羽毛の産地をダウンベルト地帯と呼びます。

 主な原産地は、ポーランド・ハンガリー・チェコ・ドイツ・フランス・アイルランドなどのヨーロッパ、アジアでは、中国・台湾・韓国などで採取されており、中でも中国が世界最大の生産国となっています。

 ヨーロッパや北米のダウンは、アジアのものに比べて大きく、特にヨーロッパでは羽毛採取やフォアグラ目的のために、十分に生育されて飼育されるグースが多く、アジアの食肉目的の物と比べ、成熟したダウンが採取されるので、より高級とされています。


羽毛産地の地図


ポーランド産(ポーリッシュ)
 寒暖の差の激しいポーランドは、北緯45度以上に位置し、良質なダウンが育つ環境を持っています。
中国のグースが、2.2kg~2.5kgまでしか育たないのに比べ、広大な農場で伝統的な飼育方法で育てられたポーランド種と呼ばれる大型のグースは、7kgと非常に大きいため、ダウンボールも大きく、高い保温性があります。また、その白さが特徴です。
特にポーランドの南方に位置するキエルツェは、厳寒期には零下6度を下回ることもあり、この激しい自然環境は良質なダウンの生産において最適とされています。


ハンガリー産(ハンガリアン)
 夏と冬の期間が長く、寒暖の差が激しい大陸性気候のため、良質なダウンが採取されます。
ハンガリーのダウンは、良く生育したグースから採取されるので、ダウンボールが特に大きく、また耐久性に富みます。


カナダ産
 カナダ産の中でも北極圏付近で採取されるダウンは、厳しい自然環境の中、野生に近い形で飼育されるので良質とされています。
また、アルバータ地方のダウンは、北欧諸国と比べても遜色ない品質と言われています。


ノースヨーロピアン産(ドイツ・イギリス・アイルランドなど)
 ヨーロッパの厳しい検査をクリアしたものだけが輸出されるので、品質が安定しています。

アジア産(中国など)
 特に、中国の東北に位置する吉林(チーリン)省の長白(チャンパイ)山麓(標高1000m)で、野生に近い形で飼育されるフォレスト・グースは、高品質で知られています。


ハンガリアン産地証明書(表・裏)
原産地証明
 羽毛の産地に自信のある羽毛ふとんには、羽毛を採取した場所を示す「原産地証明書」が必ず付けられています。
品質の良さでは、ヨーロッパ産、特に大きなダウンが取れる寒冷地のものが有名です。
特に、ポーランド産のポーリッシュ、ハンガリー産のハンガリアンのものならば高い品質が保証されていると言えます。




ゴールドラベル
 羽毛ふとんの品質性は、布団に付属しているゴールドラベルの星表示(6つ星・5つ星・4つ星・3つ星)で知ることも出来ます。
 このゴールドラベルは、日本羽毛製品共同組合が「羽毛ふとんの一層の品質向上」「消費者の商品選びをスムーズにする」「羽毛の品質はもちろん、側生地、縫製にいたる羽毛ふとんのトータルを保証する」ことを目的に発行しているラベルです。

 ラベルの違いは、基本的に羽毛ふとんに使われる羽毛のダウンパワーの数値で区分されます。

ニューゴールドラベル
【ニューゴールドラベル】
使用羽毛品質 ★★★
ダウンパワー 300cm3/g以上
エクセルゴールドラベル
【エクセルゴールドラベル】
使用羽毛品質 ★★★★
ダウンパワー 350cm3/g以上

ロイヤルゴールドラベル
【ロイヤルゴールドラベル】
使用羽毛品質 ★★★★★
ダウンパワー 400cm3/g以上
プレミアムゴールドラベル
【プレミアムゴールドラベル】
使用羽毛品質 ★★★★★★
ダウンパワー 440cm3/g以上


【ダウン(羽毛)パワーの違い】ダウン(羽毛)パワーの違い
ダウンパワーとは、羽毛のふくらみを数値化したもので、羽毛がどれだけフワフワしているか?どれ程の弾力性を持っているか?を表したものです。
良い羽毛は、重さあたりの体積が大きく、よりたくさんの空気を含みます。数値が大きいほど、大きく膨らむことを表し、優れた保温性を持つ高品質な羽毛と言えます。


羽毛ふとんの特徴
軽くて暖かい
 羽毛ふとんが暖かいのはダウンが呼吸しているからです。
 寒い時にはダウンが膨らんで開き、たくさんの空気を抱え込んで、体温から伝わった熱を逃さないようにしてくれます。
 1つ1つのダウンボール同士が固まることがないように出来ているので、ダウン全体が効率的に広がり、羽毛ふとんの隙間をなくし、暖かい空気を逃さないようにしてくれます。

 逆に暑い時は、ダウンが閉じて空気を抱え込まず、暖かい空気の通り道をつくり、熱を逃し通気性を良くしてくれるのです。

 羽毛ふとんは、ふっくらとボリュームがあっても、中身はほとんど空気なので軽くて体を圧迫しません。


さわやかで快適
 人は眠っている間に、コップ一杯ほどの汗をかくと言われています。
 羽毛ふとんは「吸湿性」と「発散性」に優れていますので、眠っている間に体から余分な湿気を吸収し、布団の外に発散してくれます。
 これは「透湿性」と呼ばれるダウンの特性です。

 羽毛ふとんは、他の素材の布団に比べて透湿性に優れているため、布団の中がムレにくく、いつもサラっとした肌触りで、ここちよく眠れます。


体によくなじむ
 ドレープ性も羽毛ふとんの特徴です。 ※ドレープ性とは、布団が身体に沿ってフィットすることを表す言葉です。

 羽毛ふとんは、繊維を蓄積した他の素材と異なり、羽毛1個1個が独立しているので、たくさんの空気を含み、布団が身体に沿って包み込むようにぴったりフィットする、ドレープ性がとても高い素材です。

 身体に合わせてフィットしてくれるので、肩口に隙間ができることなく、寒い空気が布団の中に入ることを防いでくれます。


お手入れが簡単
 羽毛ふとんは「放湿性」に優れているので、他の布団のように、頻繁に日に干す必要がありません。
 また、小さく畳んでも、すぐに元に戻り圧縮回復力がよいので、他の布団に比べ、収納場所をとらず、軽くて日々の取扱いも楽なので、極めて便利です。


※ 圧縮回復力とは、圧力をかけて体積を小さくした状態から、圧力をなくした元の状態を取り戻す力です。


とても経済的
 羽毛ふとんは、耐久性に大変優れていますので、丁寧に使用すれば長期間使用できます。
 つまり、長い目で見れば、とても経済的なのです。

 また、側生地を交換したり、中の羽毛を補充したりなど「リフォーム(打ち直し)」や「丸洗い」が可能です。
保温性に優れているので、電気毛布やあんか、室内暖房などの使用を減らますので、エネルギーを節約できます。


キルトについて
 羽毛掛ふとんの構造は、基本的に「表生地」と「裏生地」との間に、高さのある「マチテープ」を縫込み、羽毛の入る立体小部屋をつくります。
この立体小部屋をつくることで、ふとん全体に羽毛が均等にいきわたるようにし、全体の保温効率を高めます。

 この加工をキルトと呼び、羽毛のかたよりを防ぎ、かさ高を保つために側生地に施します。

 一般的に「立体キルト」「二層式立体キルト」と呼ばれるものがあり、当社ではこの2つのタイプに加えて「アルダスキルト(特許取得構造)」の3タイプがあります。

 他に、上下の側生地を直接縫っている「平面キルト(ヨーロピアンキルト)」があります。


平面キルト
平面キルト
 表地と裏地とを直接縫製するので、羽毛小部屋は立体にはなりません。

 通気性は良いので夏用のダウンケットに適していますが、縫い目近くの羽毛がつぶれてしまい、空気を含まなくなるので、保温性が悪く、冬用の羽毛ふとんには、向いておりません。

 また、側生地のミシン目から、羽毛が飛び出すこともあります。

立体キルト
立体キルト
 立体キルトの構造は、1つ1つがボックス状に密閉されていて隣の小部屋の羽毛に熱を効率的に伝えます。

 身体の中央部分にクールポイントと呼ばれる、暖かさが逃げる部分(キルティングの縫い目の部分)が出てしまいます。

 また、羽毛を吹き入れるための切れ目が開いており、2~3年は問題がなくても、徐々に羽毛が移動し片寄りが生じることがあります。

二層式立体キルト
二層式立体キルト
 二層式立体キルトの構造は、羽毛の立体小部屋をさらに上層・下層に分けてつくり、上層3×4マス・下層4×5マスの立体羽毛小部屋ができます。

 上層下層でマスがずれるようにつくられているので、より隙間なく羽毛がいきわたり、保温効率も大幅にアップします。

 キルトをずらしたため、クールポイントは防げますが、羽毛の移動は、完全に防ぐことはできません。

アルダスキルト
ALDSキルト
 ALDS(アルダス)キルトの構造は、4×5マスの羽毛立体小部屋の各マスに特殊な弁を設けることで、吹き込んだ羽毛が移動しないという画期的な構造です。
(特許番号3168885号)

 寒冷地仕様構造で、通常4~5cmのマチ高を8~10cmと高いマチにすることで、クールポイントをなくし、優れたかさ高性を実現しました。

 より保温性、フィット性が高い羽毛ふとんで、広くお客様に喜ばれております。


羽毛ふとんの生地について
 羽毛ふとんの側生地には、羽毛が飛び出さないよう『ダウンプルーフ加工』が施されています。

ダウンプルーフ加工とは?
ダウンプルーフ加工とは? <プルーフとは「防ぐ」「・・・を通さない」という意味があります。>
  •  綿毛のように1ッ1ッが細かい繊維の羽毛(ダウン)は、針穴のような小さな穴からでも、容易に飛び出してしまいます。羽毛(ダウン)を飛び出さないように、目の詰まった羽毛ふとん用に織られた高密度織物にローラーの圧力と熱を加えながら、糸と糸の隙間を狭める特殊な加工のことです。空気のみが通り抜けるので通気性が良く使用時のムレを防ぎます。
  • ※ 樹脂などを使い、生地の隙間を完全に埋めてしまう「コーティング加工」とは、異なります。

羽毛ふとんの取り扱いについて
 末永く、快適にお使いいただくための「取り扱い方法」をご紹介いたします。

収納方法
  • 日干しをしてから、小さく畳んで軽く押さえ、湿った空気を押し出し、お買い上げの際の専用バッグ(不織布)にいれて保管してください。
  • また、防虫剤を布団の間に入れてください。
    防虫剤は臭いのつかないピレスロイド系をお勧めします。
  • バッグがない場合は、密閉せずに(ビニール袋等に入れないで)シーツ等の通気性の良いもので包んでください。
  • 収納場所は押入の上の段など、なるべく湿気の少ない場所がお勧めです。


干し方
  • 他の布団のように頻繁に干す必要はありませんが、保温性を高めたり日光消毒のために、
    月に1~2回、1時間から2時間程度、風通しのよい日陰に干してください。
  • 日干しする場所は、布団の生地の色あせを防ぐため、カバーをかけたまま干しましょう。
  • 取り入れる際は、布団を強くたたかず、ほこりをはらう程度にしてください。羽毛が飛び出す原因になります。


クリーニング(丸洗い)は?
  • カバーを掛けてお使いになれば、頻繁にクリーニングする必要はありません。しかし長くご使用になる間に側生地の汚れが気になってきたら、水による丸洗いをすることができます。
  • ドライクリーニングは側生地の痛みは少ないものの、羽毛のかさ高の復元はいまひとつです。
  • 水による丸洗いは、汗や皮脂・ヨダレなどの汚れ落ち、かさ高の復元には効果的です。
  • 詳しくはコチラ!⇒ 『 おふとんクリーニング 』 をご覧ください。


カバーについて
  • カバー・シーツは衛生上、こまめに洗濯してください。
  • 羽毛ふとんのサイズに合わせて、柔らかい素材(綿がお勧めです)のカバーを使ってください。
  • 内側にボタンやひもの付いたカバーと、布団のループ(輪)をセットしていただければズレもなく、側生地の痛みや汚れも防げます。
  • 《注意》 ふとんに襟カバーやタオル等の縫付けは、絶対にお避け下さい。羽毛吹き出しの原因となります。
    詳しくはコチラ!⇒ 『 ダウンプルーフ加工 』 とは? をご覧ください。


寒いときには?
  • 羽毛ふとんは、カバーをして直接体の上に掛けて使用すると、より暖かく感じるでしょう。
  • それでも寒い場合は、毛布やタオルケットを羽毛ふとんの上に重ねるか、羽毛肌掛ふとん等を組み合わせて、ご使用ください。


ニオイについて
  • 購入当初(オゾンの臭い)やビニールなどの通気性のないものに入れて保管すると、臭うことがあります。
  • これは、ご使用中に自然に消えていくので、心配ありません。
  • また干していただくなど、外気にさらすと比較的早く消えます。一度、布団を丸めるなどして、中の空気を抜いてから干すと効果的です。


リフォームについて
  • 当社では、古くなった羽毛ふとんには、リフォームをお勧めしています。
  • 羽毛ふとんリフォームは、羽毛ふとんを単に丸洗いするだけではなく、解体・除塵(じょじん)・洗浄・乾燥・新しい側生地に吹き込み、などのプロセスを経て、お手持ちの羽毛ふとんを新品同様に甦らせます。
  • 詳しくはコチラ!⇒ 『 羽毛ふとんリフォーム 』 をご覧ください。


最後に・・・
 当店をはじめ、百貨店や取引先の寝具メーカーがお客様のお宅を訪問して、羽毛ふとんの点検をすることはありません。
 関係があるように偽って、高額な商品の購入や修理をしつこく勧める「点検商法」の被害が、最近急増しています。
 お布団のことで何かありましたら、まずは当店、または下記の窓口まで、ご相談ください。


【日本羽毛製品協同組合】 東京都中央区日本橋茅場町3-12-4 / TEL 03-5649-2285
【地方自治体などの消費者センター】 など